それはたった一瞬の、のレビュー一覧
母を失い、父とふたりで過ごす藍火。 何事もない、平穏な毎日に、突然現れたのはくすんだ空と、4人の男女。 訳が分からないまま見知らぬ土地に連れてこられた彼女。そんな彼女に救いを求める4人。 それぞれの悩み。 それぞれの苦しみ。 それぞれの、思い。 ため込まないで、私がいるから。 1人じゃないから、傍にいるから。 怖がらないで、空はそこにあるから。 4人の思いは悲しいのに、だけどとても美しい。 藍火の真っ直ぐな思いはとてもキレイで、彼女こそが、彼らにとって、一瞬の、だけどとても素敵な日々だったのだろうと。 だからこそ、あの、一瞬が、彼らの希望に繫がったのだろうと。 結末にも心温まり、登場人物みんながとても愛おしく感じました。 頑張らなくていい、ただ少し、踏み込むだけで何かが変わって行くんだろう、そんな勇気をいただきました。 是非、ご一読を。
突然の訪問者に導かれ辿り着いたのは、美しい街並みの夢の都「朱天楼」 灰色の空が見下ろすその場所で、 藍火はたった一瞬の、だけど永遠に忘れない、 とても大切な時を過ごした─── 人は誰でも、何かを抱えて生きているもの この作品の世界で生きる人たちは、みんな心に大きな重荷を背負っていたけれど 大なり小なり、その「何かを背負って」生きているという意味では、誰もが彼らと同じなのだと思う。 たったひとりでそれを抱えて、晴れない空をいつまでも仰いで だけどそれではいつまでだって、濁った景色は消えないから みんなで分かち合えばいい 分かち合えないのなら、一緒に傷ついて泣けばいい たったそれだけのことだけど、たったそれだけのことで きっと、誰かの空は、青く晴れる。 灰色の世界で、だけど七色にきらきらと輝くような素敵な作品。 ぜひご一読を。