はつこい―最後の恋であるように―
「杏美と最後に話したのは、
多分俺だ。

あの時俺が行かせなければ、
杏美は今も生きていたかもしれない。

俺と一緒にはいなくても、
誰かと付き合って、
幸せに暮らしていたかもしれないんだ。

それで良かったんだよ。」


そう言ったきり、
田野は顔を伏せた。



田野はきっと、
愛した人をまた失うのが、
怖いのだろう。


だから好きにならないなどと言うのだろう。
< 19 / 31 >

この作品をシェア

pagetop