はつこい―最後の恋であるように―
ずっと恋人を作らない君に、
一度聞いたことがあった。


恋人は作らないのか、と。



君はいつかの田野と
同じような答えをした。


「また誰かをすきになるなんて、
考えられなくて。」



万に一つの可能性を
打ち消されたと思った。


君が俺を好きになることは、
これまでも、この先も、
ないのだと。



それからしばらくして、
俺にはまた恋人が出来た。

会社の後輩で、
平島咲恵(ひらしま・さきえ)という。

これまでの彼女で、
女と付き合うのには懲りていたのだが、
今度こそ、きっぱりと諦めなければいけない、
という思いと、
彼女の純粋さとひたむきさ、
そして君のものとも少し似ている
澄んだ声に惹かれ、付き合いはじめた。
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