依頼人


 そんなツヨシを見て、女は目を見開いた。

 女は震えるばかりで、なかなか行動を起こさない。
 痺れを切らしてツヨシが口を開く。

「どんなに待っても、
 俺はお前を殺さねぇよ」

 女はツヨシのその言葉に絶望し、顔を歪めた。
 キュッと両目を固くつぶり、そして、手にしていたナイフを、そっとツヨシの首元から外して、ベッド下へ放った。


「私は、幼い頃から父親に、性的虐待を受け続けた」

 女はベッドから足を下ろして腰掛け、ツヨシに背を向けると、静かに話し始めた。
 ツヨシは仰向けに寝たまま、天井を見詰めながら、耳だけを女の話に傾けた。


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