依頼人
「最初に殺したのは、父親だった。
事情が事情だけに、罪は軽かった。
少年院には入れられたけど、1年で出してもらえた」
ツヨシは表情を変えない。
黙ってただ、聞いていた。
「永久に出てこられなければ良かったのに。
今でもそう思う。
その後の私は、たくさんの男に抱かれたけど、
そのたびに、私を抱いた男を殺してしまうの。
気付くといつも、血だらけの男がベッドの上に横たわっていて……
この手には、血のついたナイフを握り締めている」
女は両手の平を自分に向けて、左右交互に見ながら、嗚咽を漏らした。