依頼人


「幸せになりたかっただけなのに。
 私を求めてくれる人が現れるたび、それに応えたいと思っただけなのに。
 それなのに……

 私は殺人鬼になってしまっていた。
 気がつくといつも、私を求めてくれた人を殺していた。

 父を殺した私が、
 幸せなんかを望んだらダメだったのね。

 だから、死にたかった。
 自分でこの世から消えるのは寂しすぎるから、
 あなたに殺して欲しかった」

 しゃくり上げながら必死に語る女に、ツヨシはゆっくりと視線を移した。


「いつも、気付くと殺してたのに、
 今日、俺を殺さなかったのは何故だ?」

 その答えをツヨシは知っていた。


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