依頼人


「皮肉だな。
 死を望んでいる俺は殺されず、
 あんたを愛した男たちは、無念を残し、死んでいった」

 女が振り返った。
 唇を震わせ何かを言おうとしているが、言葉にならないようだった。


「あんたを殺しに駆り立てていたのは、
 過去のトラウマじゃない。

 好きでもない男に抱かれた嫌悪感だ」

 女は両手で口を塞ぎ、激しく泣きじゃくった。


「あんたが俺に惚れなかったら、
 今頃俺は、念願のあの世へ行けてたわけだ。
 残念極まりないね」

 言いながら、ツヨシは手際よく衣類を身につけた。


「どっちにしても、あんたは病んでる。
 病院行ったほうがいい。

 あと……
 警察も」

 言って、ツヨシは部屋の出口へと向かった。


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