依頼人


 ツヨシが微動だにせず、女の視線を受け止めていると、やがて女は歩み始め、ゆっくりとツヨシとの距離を縮めた。


「あなた、強盗じゃないのね?」

 問うというよりは、確認のようだった。


「何のことだ?」

 ツヨシはその表情を変えることなく問い返す。
 どこから見られていたのか確かめるまでは、白を切るつもりだった。


「財布の中のお金には手を付けずに捨てたもの。
 殺すのが目的だったんでしょう?」

 会話のキャッチボールが成立していなかったが、女の返しを不自然だとは感じなかった。

 ツヨシは、
 この女が一部始終を全て見ていたのだと確信した。

 微かに目を細めただけで、ツヨシは何も答えない。
 困ったように苦笑し、女は続けた。


「あなた、殺し屋なの?」


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