依頼人


 それでもツヨシは表情一つ変えなかった。

「何故黙っているの?」

 女は苛立った風でもなく、ただ、ツヨシの答えを欲しているだけのように見えた。

「だったら?」

 ようやく口を開けば、ごく短い言葉。
 女は再び苦笑する。


「仕事をお願いしたいの」

「俺は素人の依頼は受けない」

「口止め料よ」

 言って、女は悪戯っぽく微笑んだ。


「めんどくせぇんだよ。
 俺にとっちゃ、あんたの口封じなんか、簡単だ」

 若干脅迫じみた口調でツヨシは言った。

「だから、私の口を封じてくれればいい」

 意味がわからず、ツヨシは微かに首を傾げた。


「私を殺して欲しいの」


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