依頼人


「だったら……

 私を抱いて」


 女の身体は微かに震えていた。
 雨が体温を奪ってしまっているのだろうか。
 それとも、他の何かが……


 ツヨシは両手で女の肩を掴むと、自分の胸から彼女を引き剥がし、

「ホストクラブへ行け」

 冷ややかに見下ろして言った。


「あなたがいい。
 あなたに抱いて欲しい」

 女は縋るような瞳で、ツヨシに訴える。

 ツヨシはその言葉の真意を見抜こうと、女の顔を凝視した。

「何を企んでる?」

「何も」

 ツヨシは女の頬をそっと右手で包み込んだ。

「泣いてるのか?」

 女は答えず目を伏せた。

「来いよ」

 言って、ツヨシは女の肩を抱いて歩き出した。


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