君恋
プロローグ
今日の空は一段と綺麗。
青くて雲ひとつなくて見ていて飽きない。
「でさ-。ちょっと、杏里聞いてる?」
「へ??」
やば…。
見とれすぎてて人の話聞いてなかった…。
「もぉ…。
あんたは、いつもそうなんだから…。」
「あはは。」
あたしは目の前の美羅に苦笑いをした。
「で、何のはなしだっけ?」
「だ・か・ら!!
隣のクラスの橋本君と瑠璃が付き合ってるんだって!!!」
「まじで!!」
「まじ!!!」
橋本君とはこの学校で知らない人はいない。
1年生の頃からバスケ部のスタメンで
今ではバスケ部のエース。
かっこよくて、運動神経バツグン、おまけに成績優秀!!!
まさに天才以外いいようがない
完璧な男子!!
その男子1人に学校の数十人の女子は恋に落ちている。
ちなみに、美羅もその1人。
そんな完璧君と瑠璃が付き合うなんて…。
新聞の一面にどーんと載りそうなビックニュースだ。
「何で…何で…よりによって瑠璃なのよぉぉぉ!!!!」
「美羅、落ち着いて…!!」
美羅は悲しみに浸っている。
当分、話しかけても呪文のように
「何で、何で、瑠璃なの…。」
と、唱えるばかり。
恋かぁ…。
あたしには当分縁の無いことだと思う。
荒木杏里【あらきあんり】
初恋もまだの高校3年生
そんな、あたしにも
運命の出会いというものが訪れるなんて
この時、1mmも思ってなかった…。