DOLL+〜ボロボロだった俺の女〜

−−





「……ママ?」


目の前に居るママは、赤かった。


「み…そら……っ」


真っ赤な手が私の頬をぺたっ、と触る。
それがママの手だと気付くのに、少しだけ手間取った。


「貴女は逃げなさい! 速く……」


ママの声は、何時もより掠れていて……
何より必死そうだった。


「ま、ま……?」


私は多分、酷く歪んだ顔をしていたと思う。
放心状態で、目の前の光景が分からない、
信じられない、そんな感じ。


「美、空……良い子、だから…言うことを、聞いて?」


ママはにっこり笑った。
私の為に。
苦しいのは、死にそうなのはママの方なのに。
私の為に笑うママは、酷く美しかった。

キャバ嬢のママと言うべき、気品や妖艶さが滲み出ている。



それは私の頬を触る手が、
私を突き放す手へと変わる瞬間でもあった。


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