DOLL+〜ボロボロだった俺の女〜
「……野々宮 藍さんですね?」
−−−前の家に着いて三十分位だろうか。
発音のよい、聞き取り易い声が聞こえた。
背中を向けていても分かった。
「……違いますよ…今は藍じゃなく、美空です」
神さんは少し驚いたらしく、
間を開けてから、「申し訳ありません…美空様」と
態々丁寧に言い直してくれる。
「……どうなるんですか」
美空にとってなるべく冷静に聞いたつもりだった。
神さんはニコリと綺麗に笑い答える。
「美空様、どうにもなりませんよ。
我々にとっては、どんな状況でも、
借金を返して戴く−−それだけです」
言っている内容は残酷で、彼を纏っている雰囲気はおじ様特有の洗礼されたもので。
何故か美空は落ち着いてしまう。
「それでも、美空様一人では無理だということは我々も承知の上です。
美空様のサポートをする−−その為に私は居ます」
……頼もしい。
きっとママならこんな神さんを見たら、そう言うだろう。
美空は思わず目を瞑り、神さんに頭を下げる。
「有難うございます、心強いです」
神さんがフッと笑って、「いえ…」と言った気がした。