屋上にて
少額の金だが、いつもと違う緊張感があった。
それから数日間、いつ上司に呼ばれるかと思いながら過ごした。
しかし何事もなく一週間が過ぎた。

またいつものように変化のない毎日が続いた。
そして再び経理のデータをいじった。
前よりも少し金額を増やして。
そんな事を繰り返すうち、かなりの金を使い込んだ。

しかし、来週、経費削減のために
一度すべての経理データを見直す事になった。
一斉にチェックするのだ。
横領の事実は間違いなく発覚する。

とても言い逃れできない額だ。
懲戒免職。そして逮捕。終わりだ。

結婚もしていない。
たいした才能もない。
この不況の中でやり直すのはとても無理だ。

私には、もう死しか残されていなかった。

そして屋上へと上がってきたのだ。

しばらく宙を舞って、それで終わりだ。
今のままよりずっと楽になれる。

屋上をぐるりと囲んでいる手すりを乗り越え、
その向こうの一段高くなった所に立つ。

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