寂しさを埋めて
藍希は淳の胸で目を見開いて、二度目の告白を聞いていた。
お礼を言われたとき、藍希はふるふると首を振る。
「夢じゃ、ないんだよね?」
確認する声は、未だ細い。
淳は藍希を離して、見つめ返した。
「夢や嘘だって言われたら、俺が泣く」
真剣な表情(かお)でそんなことを言われて、藍希は小さく笑った。
「やっと笑ったな」
淳の言葉にはっとして笑いを収めると、淳はひどく優しく微笑んでいた。
藍希は、今日はまだ淳の前で笑顔を見せてないことに気づき、同時にさっきの言葉も冗談だったことを悟る。
暗くなった藍希の表情(かお)に気づいたのか、淳は藍希の耳元でそっと囁いた。
「でも、さっきの言葉も本気だぜ」
甘い甘い響きに、藍希は頬を染めて片耳を覆う。
近すぎて、淳の息が耳にかかってくすぐったい。
二人してくすくすと笑い合った。
「ねぇ、淳兄。証を頂戴?
淳兄が藍希を好きだってことが嘘じゃないって証が欲しいの」
唐突に、淳を見つめて言った藍希。
淳は大胆とも取れるその台詞に面食らって、藍希を見つめた。
「……お前、誘ってんの…?」
そんなことを囁きながら、淳は藍希の頬を手の平で包み込む。
「ぇ?」
もちろん、藍希は何も分かってない。
「淳兄?」
小首を傾げて見返してくる藍希に、淳は顔を近づける。
「目、閉じて。黙っていて」
まるで命令するような口調。
でも、藍希に嫌だという感情は現れないで、藍希は大人しく瞳を閉じた。
二人の呼気が混ざって…。
唇が、触れ合う。
幸せに包まれて迎えた、藍希のファーストキスだった__。