寂しさを埋めて




他の先生の紹介も挨拶も終え、式は担任紹介と担当紹介へと進んでいく。
藍希の耳はそれを右から左に聞き流し、瞳は淳に釘付けだった。

__どういうこと!?
ねぇ、淳兄…これは、どういうこと!?

「……以上で、本日の式をすべて終わります。
三年の生徒から順に教室へ戻り、HRをしてください」

その声で全ての式が終わり、指示に従って三年生がぞろぞろと体育館の出入り口に向かう。
厳粛な式とは正反対にざわつく体育館で、藍希は先生たちのところに乗り込もうと足を進める。
しかし、その途中でポケットの中がわずかに震えた。
身体に染み付いている、独特の携帯バイブ。
これは、淳からの連絡のときのものだった。

藍希は生徒の陰に隠れて携帯を確認する。
着信を確かめると、メールの差出人は【宮澤 淳】。



«««««»»»»»
藍希。
お前のことだから、きっと式が終わったら俺のところに来こうとするだろうが、
ダメだからな。
学校じゃあ、話さない。
今日家に帰ったらちゃんと話すから、
それまで良い子で待っててくれ。

P.S.   分かってるだろうけど、
友達にも俺のことは話すなよ?

   藍希のもう一人の兄より
«««««»»»»»



「……淳…兄………」

藍希は携帯を握り締め、掠れた声で淳を呼ぶ。
淳は藍希の目の前を素通りし、体育館を出て行った。
淳の背中がとても遠くて、小さく思えた__。



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