寂しさを埋めて
初めて…。
凪都帆の誘いを断わった。
初めて…。
嘘をついて、部活をサボった。
用事があるって、あながち嘘ではないけれど。
どうしてだか、心がツキツキと痛む。
逃げるように家に帰ったときには、心臓が嫌にドキドキしてて。
この痛みが部活に対する罪悪感なのか、
淳に対する話してくれなかった哀しみなのか、
どっちかなんか分からなくなっていた。
午前中だけの学校を終えて、速攻家に帰ってみても、当然のように淳は帰っていなかった。
『いつものように』家で出迎えてくれるかと勝手に思ってしまっていた藍希は、淳のいない家にどうしようもない寂しさを感じた。
誰もいないリビングを抜けて、藍希は自分の部屋の戸を閉める。
向かいの窓を開けて…。
桜の匂いを乗せた風が、部屋の空気を一掃して、出て行って…。
藍希は制服を脱いでハンガーに掛けた。