寂しさを埋めて
藍希と淳は5歳違いの幼馴染だ。
二人の母親が親友同士だったことに加え、藍希には淳と同い年の兄がいた。
その兄、和司(かずし)と淳の仲はすこぶる良く、遊ぶのはもちろん、小さいときはよくお泊りもしたものだ。
藍希は淳を「淳兄」と呼び、和司と同等(もしくはそれ以上)に慕っていた。
淳も藍希を本当の妹のように可愛がっていた。
__その想いが、恋に移り変わったのはいつだったろうか…。
淳は藍希の髪を梳いた。
触れる指は相変わらず冷たくて、藍希は心地良さに目を瞑る。
「藍希…。俺はな…。…俺は……」
鼓膜を揺する、聞き慣れた声。
大好きな、声。
__藍希もまた、淳をただの幼馴染として思っていなかった。
藍希はそっと目を開いて、淳を見つめる。
淳の、真剣な眼差しとぶつかった。
「藍希、俺はお前が好きだ…」
しかと聞き取れた言葉に、涙が出そうになる。
「妹として、幼馴染として、お前のことを想ってるんじゃなくて。
一人の『女』として…お前が好きだ」
…嬉しすぎて涙が溢れた。
ずっと、ずっと好きで…。
でも、淳兄は5歳も年上だから、藍希のことはせいぜい妹にしか思ってくれていないだろうって、諦めてた。
それでも、淳兄以外に好きな人は作れなくて…。
同年代の男の子と話す度に、淳兄のことが好きな気持ちは溢れてきて…。
どうにも、諦められなかった。
__藍希も、淳兄が好きだよ…!
嗚咽で言葉にならなくて、心で叫ぶ。
当然ではあるが、淳には…伝わらない。