寂しさを埋めて
淳は藍希の涙を見つめて、寂しそうに笑った。
髪を梳いていた指を止めて、藍希から離してしまう。
「ごめんな、藍希」
突然の謝罪に、藍希はわけが分からなくなる。
「…淳兄…?なんで……」
戸惑いの声は震えていた。
「混乱させて、ごめんな。
大丈夫だよ。ちゃんと家の付き合いはするし、急に藍希に冷たくしたりもしない。
だから、泣かないで。藍希の涙が一番辛いよ…」
淳の寂しそうな表情(かお)。
言葉の、意味するところに気づいて、藍希は哀しくなった。
淳は、藍希の想いを知らないのだ。
だから、藍希が淳の気持ちに応えられないから泣いていると思っているらしい。
__違うのに…。
「…ちが、うよぉっ!」
絞り出した声は、哀しみに満ちていた。
「…じゅんにぃの、ばかぁっ!」
「藍希?」
「あ、きも…藍希も淳兄のこと、好き…だもんっ!
う、れしく…て、泣いた、だけだもんっ!
なんでぇ…なんで分かってくれないのぉ……っ」
哀しくて…。
心が痛くて…。
次から次へと涙が溢れて止まらない。
「じゅんにいのこと…好き、なのぉっ!
大好きなの…っ」
伝わらないのが怖くて…。
誤解されるのが辛くて…。
何度も、何度も繰り返す。
__淳は、何も言ってくれなかった。