寂しさを埋めて
家族
次に目覚めたときには、昨日の苦しみが嘘のように、身体が軽かった。
気分も悪くないし、熱もちゃんと平熱だ。
「ん~っ!」
一日中眠っていた身体の凝りをほぐすように伸びをする。
そのとき、ドアがノックされ、和司が入ってきた。
ベッドから身体を起こしている藍希を見て、和司は優しく顔を和ませる。
和司の「和」の字のように、和やかな気性で妹にも優しい、自慢の藍希のお兄ちゃんだ。
「おはよう、もう元気か?」
「うん!大丈夫だよっ」
「そうかそうか」
ベッドの端に腰掛けて、和司はにこにこと藍希の頭を撫でた。
「やっぱり淳の看病が良かったのかな?」
突然の「淳」の名前に心臓が跳ね上がる。
昨日、淳兄に告白されて。
藍希自身の気持ちも伝えて。
抱き締めてくれたことに安心して、藍希そのまま眠っちゃったんだ…。
目が覚めたときには、淳はもう部屋にはいなかった。
「ねえ、お兄ちゃん。淳兄は?」
「淳は今日、大学だぞ。
昨日は講義取ってなかったらしいから、藍希の看病を頼んだんだ。
俺は昨日は休めなくって…。
ごめんな、藍希」
本当に申し訳なさそうな顔をする和司に、藍希は首を横に振った。
__和司は過保護なくらい心配性だ。
これは、家に両親がいないことが関係しているのだと藍希は思っている。