シャボンの国 -the land of soap bubbles-
皇子出現
1
***
「…終わった、」
大きく息を吐けば、その額からは僅かに汗が滲み出ている。
前に住んでいたアパートに耐震問題が発覚し、不動産会社から半ば強制的に退出させられたのが1ヶ月前の事。
そこから、条件のあまり変わらないアパートを急いで探しようやく引越しが済んだのが2週間程前の事だったか。
毎日朝から晩までバイト三昧で、こうしてたまの休みの日にしか荷解き出来ず、そしてそんなたまの休みを労働に費やしてしまう事が酷く勿体無い事の様に思えてしまう。
それでも女性、―――松岡 花音(マツオカ カノン)はこの新しいアパートに満足していた。
不動産会社に責任があったとして、家賃を少し安くしてもらえた事も、アパートと言う割にはその外観や部屋の中が綺麗な事も、コンビニや駅が前のアパートよりも近い事も。
コーヒーを手に取り、机の上に無造作に置かれたソレに目を向けながらも焦点が霞むのは花音があの日の出来事を思い出しているからなのかもしれない。
「…終わった、」
大きく息を吐けば、その額からは僅かに汗が滲み出ている。
前に住んでいたアパートに耐震問題が発覚し、不動産会社から半ば強制的に退出させられたのが1ヶ月前の事。
そこから、条件のあまり変わらないアパートを急いで探しようやく引越しが済んだのが2週間程前の事だったか。
毎日朝から晩までバイト三昧で、こうしてたまの休みの日にしか荷解き出来ず、そしてそんなたまの休みを労働に費やしてしまう事が酷く勿体無い事の様に思えてしまう。
それでも女性、―――松岡 花音(マツオカ カノン)はこの新しいアパートに満足していた。
不動産会社に責任があったとして、家賃を少し安くしてもらえた事も、アパートと言う割にはその外観や部屋の中が綺麗な事も、コンビニや駅が前のアパートよりも近い事も。
コーヒーを手に取り、机の上に無造作に置かれたソレに目を向けながらも焦点が霞むのは花音があの日の出来事を思い出しているからなのかもしれない。