シャボンの国 -the land of soap bubbles-
「花音の事も聞かせろよ」



ふいにそんな言葉が耳を掠めてカイルを見やれば、カイルは穏やかな表情を崩してはいなかった。




「人間界の事は花音が出かけてる間に探検してもう大分わかったから。花音の話聞きたい」



「…私の事?」




そう言われたところで自分にはカイルの様に話せる事など無いのに。



なのにカイルは簡単にそれを口にしてしまう。




「花音ってここに一人で住んでるけど。親とかいねぇの?」




あの出来事を思い出し口にすれば心を痛めてしまうとわかっているのに。




「…いないよ、」



「何で?」




それでも口にしてしまうのはきっと。




「…二人とも自殺しちゃった」



「………え?」




あまりにも握られた手の体温が心地良くて。



今、この場所に自分は一人ではないのだと安心出来てしまって。



この瞬間なら、心を痛めてしまおうともきっと孤独感に陥ってしまう事は無いだろうとそんな事を考えてしまったから。
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