シャボンの国 -the land of soap bubbles-
一度流れ落ちた涙はその勢いを止める事はない。



次々に溢れ出していく涙をどうする事も出来なくて。



ただ自分の嗚咽だけが部屋に響いていく。



きっとそれはあの日。



両親の死体を目の前にしてしまった時以来、流す事をやめてしまっていた涙。



あれ以来、どれ程の涙を溜めてきたのだろうか。



思い出す度に胸が苦しくなる事を知って、意図的に考えない様にした。



思い出さない様にした。



結果、両親の顔すらまともに思い出せなくなって。



過去の事、としてどこか割り切る様に踏ん切りをつけて。



なのに孤独や淋しさは募る一方だった。
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