シャボンの国 -the land of soap bubbles-
ゆっくりと伸ばした手。



その指先がカイルの頬に触れる瞬間。



花音の耳に届いたのは決して聞き飽きる事の無いであろうテノール。







「………リ、ル」






思わず止めてしまった手がカイルに触れる事は無かった。




行き場をなくしてしまった指先は一瞬、宙を彷徨った後、静かにカイルから離れていく。




カイルの口にした言葉。




―――リル




それは誰かの名前なのだと何故だか花音にはハッキリとわかってしまった。




そして浮かび上がるのは罪悪感。




きっとカイルには自分の世界に気にかけている存在が居て。



それを自分が邪魔している。





そんな考えが及ぶのは、熱が下がってしまい人恋しさが僅かに薄れた所為かもしれなかった。
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