カラフル・デイズ
オレンジ色の夕日が眩しい教室に、女の子達の黄色い声が響く。

「ね、昨日のデートどうだったの!?」
「ええーカラオケ!?それって超つまんなくない??」
「いいなあー私もカレシ欲しいー!!」

ピンク色のオーラを放っている一団を遠くに見ながら、本庄紫は隣の友人にこっそり話しかけた。

「あいつら、恋しか楽しみないのかな?」

「そんな訳ないでしょ。でもいいなあー彼氏自慢・デート自慢。私もしたい!」

相手がいないけど!と言いながらペラペラと雑誌をめくるのは、小林彩香だ。



二人とも高校1年生。
恋はまだまだ漫画の中の世界。
放課後の、人もまばらになった教室で、二人は何をするでもなくこのゆったりした雰囲気を楽しんでいた。



「ほらーふたご座、今月はイイコトないし!紫はね・・・あ、意外な事実が明らかになるでしょう、だって!」

「そんなん・・・信じてどーすんの?先月だって当たんなかったじゃん。」


彩香の素直さに呆れながら紫は目を窓の外に向けると、グラウンドに陸上部の姿を見つけた。

(お。)

赤いTシャツに、黒い髪。背が高くてちょっと細い。

(アラシ発見。)

斉藤嵐。
紫の幼馴染だ。

紫が汗を流すアラシをじっと眺めていると、彩香もそれに気付いたのか窓の外に目をやった。

「嵐くんじゃん。頑張ってんね!かっこいいなあー」

「どこがかっこいいの。あんなん。」

紫と同じ背だったのは遥か昔・・・今では180センチを越える長身へと成長し、体つきは昔よりずっと大人になった。

(生意気。ムカツク。)

紫がプウと頬を膨らませると同時に、アラシが視線に気付いたのかふいに顔を上げた。

ひらひらと手を振るアラシ。

「ほら、やっぱかっこいい!」

「どこが!」

手をふりかえしながらも悪態をつく紫に、彩香は苦笑するだけだ。


鐘が鳴る。
オレンジ色の夕日は、ついに青い夜の世界へと飲み込まれていくようだ。



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