恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
小さなシルエットが、浜へ駆け下りて行った。


「あたしも、美波ちゃんのこと好きだよ」


こっそり笑って、あたしは美波ちゃんを追い掛けた。


「待ってー、美波ちゃん!」


「ねぇねぇー! 早くーう!」


浜はびっくりするほど静かだった。


風はぴたりと止み、水面が細かく輝きながら穏やかに凪いでいた。


「あっ、ねぇねぇ、へたくそー」


「わっ、ごめん。崩れちゃった」


あたしと美波ちゃんは波打ち際で白い砂の城を作ったり、


「見てー! この貝殻!」


「わあ! きれいだね。美波ちゃん探すの上手だねー」


不思議色のきれいな貝殻を集めたりして遊んだ。


来た時はまだ高い位置にあった太陽が、朱く熟れて水平線間際まで落ち始めていた。


真夏の熟れた果実がとろけて、水面が濃厚なマンゴージュース色に染まっている。


「あのさぁー、あのさぁー」


砂をいじりながら、美波ちゃんが言った。


「ねぇねぇはさ、にぃにぃのこと、好きか?」


突然、思いもしない質問に、あたしはぷはっと吹き出してしまった。


「えっ! 好きって……」


島の人たちは、どうもストレート過ぎて、困る。


「あっ! ねぇねぇ、顔が赤い」


と美波ちゃんがあたしの頬を指差した。


「夕陽と同じ色だがねー」


「えっ、嘘っ」


あたしはとっさに頬を両手で隠した。


熱い。


「にぃにぃは、ねぇねぇのこと好きだよ。美波はそう思うよ」


白い砂の山をぽんぽん叩いて固めながら、美波ちゃんはにこにこしていた。


何をどう返事したらいいのか検討もつかず、ただうつむいていると、


「こおらあーっ! 美波ぃー、陽妃ぃもー! どういう事かぁー!」


ばかでっかい声が、耳をつんざいた。
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