恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「あいー、真由美(まゆみ)さんも! 元気そうでなによりさ」


「比嘉さんも。それで、ミサトさんはいらっしゃる?」


うんうん、とオーバー気味におじさんが頷く。


「中に居るよー。朝から待ちくたびれているさ」


お母さんが平屋建ての古びた家に向かって駆け出して行った。


へんな家。


この島の人たち、みんな同じような造りの家に住んでるんだ。


赤い瓦屋根の上にはシーサーが必ず乗ってるし。


家中、引き戸だらけで。


しかも、その引き戸はあちこち開け放たれてるし。


泥棒とか入ったらどうすんの?


なんて不用心なの。


あたし、本当に今日からこんなとこで生活すんの?


「陽妃」


憮然としていると、お父さんが話しかけてきた。


「来なさい。こちらが比嘉さんだよ。挨拶して」


この人が、うわさの。


「初めまして」


と無愛想に会釈をしたあたしの背中を叩いて、お父さんがくすぐったそうに言った。


「娘の陽妃です。無愛想ですみません。誰に似たのかまったく」


無愛想ですみませんね。


これでも、あんたらの娘なんですけどね。


むっとするあたしを下からぎょろりと覗き込んで、比嘉さんがびっくり顔で大きな声を出した。


「アッキサミヨー!」


その迫力に「うっ」と後ずさりすると、比嘉さんはまた人懐こい笑顔に戻って、表情をくしゃくしゃにして言った。


「くりゃあ、でーじちゅらさんでないのー、須藤さん」


こん島にはなかなか居ないさあー、と添えて。


「……は?」


全然、何言ってんのか分かんないんだけど……。
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