恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「わっ、分からん! 知らん! 分かってても言えないさ!」


急に、海斗が慌て出した。


「にぃにぃよぅ、なあに照れてるのさー」


と、あたしの質問に答えたのは海斗ではなく、美波ちゃんだった。


「すうごい、美人さんていう意味さ! ね、にぃにぃ」


ばか美波ぃ! 、と海斗が美波ちゃんの口を手でふさいだ。


「んー! んー!……」


暴れに暴れて、美波ちゃんが海斗からすり抜けた。


「ぷはっ……何するばー! にぃにぃよー!」


「もううるさい! 美波は! あっちに行けえ」


ばれたら仕方ないさー、と耳まで真っ赤にしてはにかみながら顔を上げた海斗。


「そういうことさ!」


心臓が破裂してしまうかもしれないと、心配になった。


「陽妃は、でーじちゅらさんさ」


「ばっ……ばかじゃないの? あたし、美人でも何でもないよ!」


メイクを落とせば、ただののっぺら顔なのに。


「やめてよ!」


とあたしは顔を背けた。


目のやり場に、物凄く……でーじ、困ったから。


今日の海斗が、別人に見えた。


いつもだぼだぼの大きなTシャツにゆったりとしたハーフパンツ。


足元はいつもビーチサンダル。


そんな服装の海斗しか知らなかったから、なおさらだった。


黒い制服のズボンに、清潔感たっぷりの真っ白なワイシャツ。


足元はピカピカに磨かれたローファーで。


きちんとした服装の海斗が、やけに大人びて見えた。


いつもラフな服装だったから、気付かなかったけど。


海斗、意外と肩幅広かったんだ……。

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