恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「会長さんだがね」
あたしの背後に身を隠して、美波ちゃんがぽつりと呟いた。
「会長さん?」
あたしが聞くと、うつむいたまま美波ちゃんは小さく頷いた。
「生徒会長の、島袋……葵(しまぶくろ あおい)ちゃんさ」
あたしの後ろに隠れたまま、美波ちゃんは言った。
あたしの手を、強く握り締めながら。
島袋 葵ちゃん。
海斗と同じ中学で、同い年で、生徒会をしているらしい。
中学生とは思えないほどのすらりとしたスタイルで、背も海斗より若干低いくらいだ。
南国情緒漂う、くっきりとした顔立ち。
長い手足。
きりりとした目つきが、しっかり者のオーラをひときわ強く見せていた。
「だからな、海斗。夏休みが明けたらさ」
「うん。分かっとるさ」
同じプリントを分け合うように見つめて話し込むふたりを見ていると、美波ちゃんがあたしの手をくいっと引っ張った。
小さな、今にも枯れてしまいそうな声で美波ちゃんは言った。
「美波……葵ちゃん、きらい」
「……え?」
胸が、チクリと痛んだ。
顔を上げた美波ちゃんは、今にも泣き出しそうな表情を浮かべていた。
美波ちゃん?
「葵ちゃんは、いつも、美波いからにぃにぃを取ろうとするの」
「美波ちゃん……?」
夕陽が、青くて透明な海に飲み込まれていく。
深く深く、海底まで深く。
「美波さ、怖いのさ」
葵ちゃんは、いつかにぃにぃを連れて、どこかに行こうとしてるんだよ。
怖い、と美波ちゃんが言った。
「大丈夫よ。どうしたの、美波ちゃん」
くらくらする。
美波ちゃんの顔が、歪んで見えた。
あたしの背後に身を隠して、美波ちゃんがぽつりと呟いた。
「会長さん?」
あたしが聞くと、うつむいたまま美波ちゃんは小さく頷いた。
「生徒会長の、島袋……葵(しまぶくろ あおい)ちゃんさ」
あたしの後ろに隠れたまま、美波ちゃんは言った。
あたしの手を、強く握り締めながら。
島袋 葵ちゃん。
海斗と同じ中学で、同い年で、生徒会をしているらしい。
中学生とは思えないほどのすらりとしたスタイルで、背も海斗より若干低いくらいだ。
南国情緒漂う、くっきりとした顔立ち。
長い手足。
きりりとした目つきが、しっかり者のオーラをひときわ強く見せていた。
「だからな、海斗。夏休みが明けたらさ」
「うん。分かっとるさ」
同じプリントを分け合うように見つめて話し込むふたりを見ていると、美波ちゃんがあたしの手をくいっと引っ張った。
小さな、今にも枯れてしまいそうな声で美波ちゃんは言った。
「美波……葵ちゃん、きらい」
「……え?」
胸が、チクリと痛んだ。
顔を上げた美波ちゃんは、今にも泣き出しそうな表情を浮かべていた。
美波ちゃん?
「葵ちゃんは、いつも、美波いからにぃにぃを取ろうとするの」
「美波ちゃん……?」
夕陽が、青くて透明な海に飲み込まれていく。
深く深く、海底まで深く。
「美波さ、怖いのさ」
葵ちゃんは、いつかにぃにぃを連れて、どこかに行こうとしてるんだよ。
怖い、と美波ちゃんが言った。
「大丈夫よ。どうしたの、美波ちゃん」
くらくらする。
美波ちゃんの顔が、歪んで見えた。