恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
本当に、熱が上がってしまったのかもしれない。
頭のてっぺんからシュウシュウ、湯気が出ているかもしれない。
頬が茹だるように熱い。
目の前がくらくら、揺れる。
「おい、陽妃?」
心配そうな顔をして、海斗があたしの腕をとっさに掴んで、引っ張った。
熱い。
「うわ! 熱いーい!」
熱い。
体に力が入らない。
「大丈夫かね、陽妃よー」
「……海斗」
海斗が2人に見える。
まぶたが、鉛のように重く感じた。
「海斗……と、仲良く……ないで」
揺らめきの中、ふたり、さんにん、と海斗が分裂して増えていく。
これは、陽炎?
もうすぐ、日が暮れて、夜が訪れようとしているのに。
「……しないで」
海斗の顔がぐにゃぐにゃ歪んで見える。
「何言ってるか、陽妃」
あたしはふらつきながら、必死に海斗の腕を掴んだ。
「あのね、海斗」
熱の力ってすごい。
人を積極的にさせる薬が入っているのかもしれない。
「お願い……」
目の奥も前も、ぐるぐる回る。
「あの子と、仲良く……しないで欲しい……の」
ガジュマルの木も、黄昏色の空と雲も、白い砂も。
海斗も。
ぐるぐる、ぐるぐる。
渦巻きの中に吸い込まれて行く。
なぜなのかなんて、自分でも良く分からない。
朦朧とする意識の中で、あたしは思った。
仲良くしないで欲しい。
あの子と。
海斗に触れられたくない。
あの子にだけは。
あの、葵という女の子にだけは。
熱のせいでおかしくなったのかもしれない。
頭のてっぺんからシュウシュウ、湯気が出ているかもしれない。
頬が茹だるように熱い。
目の前がくらくら、揺れる。
「おい、陽妃?」
心配そうな顔をして、海斗があたしの腕をとっさに掴んで、引っ張った。
熱い。
「うわ! 熱いーい!」
熱い。
体に力が入らない。
「大丈夫かね、陽妃よー」
「……海斗」
海斗が2人に見える。
まぶたが、鉛のように重く感じた。
「海斗……と、仲良く……ないで」
揺らめきの中、ふたり、さんにん、と海斗が分裂して増えていく。
これは、陽炎?
もうすぐ、日が暮れて、夜が訪れようとしているのに。
「……しないで」
海斗の顔がぐにゃぐにゃ歪んで見える。
「何言ってるか、陽妃」
あたしはふらつきながら、必死に海斗の腕を掴んだ。
「あのね、海斗」
熱の力ってすごい。
人を積極的にさせる薬が入っているのかもしれない。
「お願い……」
目の奥も前も、ぐるぐる回る。
「あの子と、仲良く……しないで欲しい……の」
ガジュマルの木も、黄昏色の空と雲も、白い砂も。
海斗も。
ぐるぐる、ぐるぐる。
渦巻きの中に吸い込まれて行く。
なぜなのかなんて、自分でも良く分からない。
朦朧とする意識の中で、あたしは思った。
仲良くしないで欲しい。
あの子と。
海斗に触れられたくない。
あの子にだけは。
あの、葵という女の子にだけは。
熱のせいでおかしくなったのかもしれない。