恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
でも、瞬間的にそう思ったのは嘘でも何でもなくて、たぶん、


「仲良くしちゃ……嫌だ」


あたしの本音だった。


「おいおい! 陽妃っ」


ふらついたあたしの両肩をとっさに掴んで、海斗がぐっと顔を近づけた。


ああ……なんて綺麗な瞳なんだろう。


このまま、あたしを吸い込んでくれないだろうか。


さっき、美波ちゃんが言っていた。


あれが、どうにも引っかかって仕方ない。


―美波いと、にいにいは、ちゃあんときょうだいなのにさあ―


「ね……海斗」


―葵ちゃんは、違うって言うの―


熱のせいで、まぶたが重い。


―葵ちゃん。美波いと、にいにいは、本当のきょうだいじゃないんだよって……言うの―


熱のせいで思考回路もショートしてしまったのかもしれない。


「海斗……あなたは、本当は……誰?」


海斗は、海斗なのに。


誰でもなくて、海斗なのに。


「……あなたは、誰?」


朦朧とする意識の中、あたしは海斗の胸の中へ倒れ込んで行った。


「わあっ! 陽妃!」


海斗の声が、


「ねぇねぇっ!」


美波ちゃんの声が、どんどんどんどん遠ざかっていく。


海斗のワイシャツから、おひさまと柔軟剤の優しい香りがして。


あたしの体は、ふわふわ、宙を漂っていた。


海斗は……海斗だよね?












目を開けると、真っ暗闇だった。まるで、宇宙の中に浮かんで無心のまま浮遊しているような感覚だった。


頭がぼーっとして、何が何だかすぐには把握できなかった。


「うっ」


起き上がろうとしてみるものの、体の節々が痛くて、あっさり断念した。
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