恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
真夏の陽射しが容赦なく降り注ぐ。


白い砂地の道が陽射しを照り返す。


灼熱とはまさにこのことだ。


吸い込む空気自体が熱い。


熱風の中をあてもなく歩き続ける。


歩いても、歩いてもどこまでも続くさとうきび畑。


他には何も見当たらない。


「冗談きついって。本当にコンビニもないの」


東京は探さなくてもあちこちにコンビニも自動販売機もあるのに。


がっくりする。


この島、本当にどうなってんの。


「のど渇いたあ」


もうじき夕方なのに、真昼間のようにかんかん照りだ。


「もうダメ、限界」


歩くこともしんどくなって、あたしは力尽きるように僅かな日陰を見つけてそこに腰を下ろした。


ざわざわ、ざわざわ。


熱い風に揺れて擦れるさとうきびの葉音が気休め程度の涼しさを運んでくる。


ざわざわ、ざわざわ。


その音が本当に心地良くて、そっと目を閉じて耳を澄ませた。


しばらくそうしていると、今度は葉の擦れ合う音の隙間からまた違った音が聞こえてきた。


ザー……ザザーッ……。


寄せて……返る……波の音。


「……海?」


ハッとして目を開く。


数メートル先に、錆びついて色褪せてくたびれた看板を見つけた。


【与那星浜まで500メートル】


やったあ、海だ。


少しは涼めるかもしれない。


「よし」


立ち上がっておろしたての白いマキシワンピに付い細かい砂を払落していると、前方から歩いて来たおばあちゃんと目が合った。


しわしわの口元がゆっくり、動く。


「見ない子だねえ」


「えっと……あの」


あたしは麦藁帽子を取って、軽く会釈をした。




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