恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「こんにちは」


すると、おばあちゃんは無表情のまま、じろじろとあたしを見てきた。


「やまとんちゅかね」


「えっ?」


おばあちゃんが何を言っているのか理解できなかった。


奇妙な緊張感が背中に走る。


その無愛想でいかにも頑固者オーラに圧倒されてしまった。


なんて可愛気のないおばあちゃんなんだろう。


“やまとんちゅ”って何だろう。


首を傾げていると、


「わあ、やまとんちゅは好かん」


とおばあちゃんはますます無愛想に磨きをかけて、ぷいと目を反らしてしまった。


「……うわあ」


ぜんっぜん、可愛くないんだけど。


比嘉さんはとっても優しくて、すっごく良い人なのに。


だから、この島の人たちはみんな比嘉さんみたいに人懐こくて優しいのかもって思っていたのに。


「何よ。がっかり」


わざと聞こえるように言って、あたしは麦藁帽子を被り直してずんずん歩き出した。


「じゃあね、おばあちゃん」


「待てえ」


すれ違い様に呼び止められて振り向くと、


「なに?」


おばあちゃんが目を細めて聞いてきた。


「浜へ行くんかあ」


イントネーションは変だけど、今度はおばあちゃんの言った事を理解することができた。


「そうだけど。海、あっちだよね?」


おばあちゃんがゆっくり首を振った。


「今日はやめれえ。風が強くて、波が高いさあ」


「平気よ、大丈夫。海に入ったりしないから」


強気に言いかえすと、おばあちゃんはむっとして、


「こんだから、やまとんちゅはよう」


そう言ったあと、フンと鼻を鳴らした。
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