恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「あのさ、その、やまとなんとかって意味分かんないんだけど」


おばあちゃんはますます仏頂面になって、もう一度、フンッと鼻を鳴らした。


「やまとんちゅは本土人のことさー。やまとんちゅはくぬ島のことばあ、なあんもわかっちょらん」


ざわあ、と強い南風が吹き抜けたその瞬間に、あ、と気付く。


おばあちゃんの言っている事が、なんとなく理解できる。


やまとんちゅはきっと、あたしのことで。


あたしはこの島の事を何も分かっていない。


たぶん、そう言っている気がする。


「気ぃ付けなっさー。今日ば、ウシラシがあったよー」


「うし……らし?」


「そうさ。ウシラシさ」


ウシラシって何だろう。


……やっぱり、この島の言葉はよく分かんないや。


無視して踵を返すと、おばあちゃんが声を大きくして言った。


「浜の木に触れたらいかんよ」


それでも無視して歩く。


「災いがあるさー」


災い。


その言葉に反射的に反応して、あたしは立ち止まった。


「災い?」


振り向くと、おばあちゃんは腰を曲げて、あたしに背中を向けていた。


「そうさー。くぬ風が強い日は、くぬ波が高い日はよう、ガジュマルに触れちゃならんだに」


気ぃ付けなっさー、おばあちゃんはしゃべりながらてくてくと歩き出した。


白髪のおだんご頭に太陽の光が反射して、眩しかった。


「ねえ、ガジュマルの木って?」

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