恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「そういう事なら仕方ないよ。気にしないで、里菜。頑張ってね」


「ありがとう」


でも。


「あの……悠真、くん」


「何か」


「あの……せっかく来てもらってアレなんだけど。帰って。あたし、ひとりでも大丈夫」


お店の場所はお母さんが持たせてくれた地図があるから、なんとかなると思うし。


やっぱり、見れば見るほど、どことなく大我に似ていて気まずいというか。


「大丈夫だから」


と断ろうとした私に、


「あらんさ! (ダメさ!)」


里菜が食い下がった。


「石垣島やあ、この島と違って人がばんない居るからさ。観光客やしが居るし」


土地勘のない若い女の子のひとり歩きは良くない、と里菜は言ってきかなかった。


「わ……分かった」


里菜の熱弁に根負けしたあたしは、渋々、ふたりと一緒にフェリーに乗り込んだ。


与那星島から石垣島離島ターミナルまでは10分弱で到着した。


「暑……」


ターミナルの外に出ると南国の陽射しが肌に刺さるように降り注いでいた。


眩しくて目を細めるあたしの隣で、悠真がけだるそうに呟いた。


「あーいー……あちさんねー(暑いね)」


「当たり前さー、今更何言っとるば、悠真よー。ここは南国よ、うちなー(沖縄)だしよー」


明るく笑い飛ばした里菜が、


「あんせー(じゃあ)、くまやっさーから(こっちだから)」


バスのロータリーを指さす。


「あ、里菜、試合頑張ってね!」


「ありがとうね」


にっこり笑って駆け出した里菜が突然なにかを思いついたように振り向き、


「あー! 悠真よー!」


と睨み付ける。
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