恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
黒々と凪いだ海に投げ込まれたひとすじの月明かりの道が、涙で滲んで霞んでいった。
あたしの頬を伝い落ちて、涙がポチョンと水面に落ちる。
「その手紙の消印……札幌になっとった。やさから、おれやぁ札幌で生まれたんやって分かったんさ」
海斗は、今、どんな気持ちで。
あたしに話してくれたんだろう。
こんな……大切なことを。
「その後、母さんが迎えに来てくれてね。帰ぇるよーって。いつもとひとつも変わらん笑顔で迎えに来てくれたのさ」
――帰ぇるよー、海斗。美波が泣いてしまうさぁ。大好きなにぃにぃがおらんと泣いてしまうよ
――……おれ……この島におってもいいんか?
――なあーに言っとるばぁ、こん子は。当たり前さぁ
――やてぃん(でも)、おれやぁ……
――やーはわんの大切な子よ。命よりも大切な大切な宝物さぁ。ほら、帰ぇるよ、海斗
「ナダー(涙)が止まらんかった。あの時、初めて、本当の家族になれた気がしちゃん。嬉しかった……」
胸が、燃えるように熱くなった。
なんだろう。
なんだろう……この、胸の奥深くから込み上がってくる感情は。
「やしがさ、おれが本当のにぃにぃじゃないって知ったらさ、美波に嫌われてしまうかもしれん。もう口もきいてくれんかもしれんて思うとね……怖くてさ。どうしても、言い出せんかった」
大声をあげてわあっと泣いてしまいたいのに、できなくて、
「……っ」
でも、声が漏れ出してしまいそうで、とっさに口元を手で塞いだ。
切なくて、苦しくてたまらないのに、すごくすごく温かくて。
でも、息が出来なくなりそうなほど苦しくて。
「ずっと隠して来たんやさ。父さんも母さんもそれでいいよって。おれのしたいようにしていいよって言ってくれた。やてぃんね、隠していたばっかりに、美波を悩ませてしまっていたんよね」
胸が焦げるようにじりじり熱くなった。
その感覚は嫉妬した時とどこか似ていて。
困惑した。
あたしの体の中で、もうひとりのあたしが、もがいている。
あたしの頬を伝い落ちて、涙がポチョンと水面に落ちる。
「その手紙の消印……札幌になっとった。やさから、おれやぁ札幌で生まれたんやって分かったんさ」
海斗は、今、どんな気持ちで。
あたしに話してくれたんだろう。
こんな……大切なことを。
「その後、母さんが迎えに来てくれてね。帰ぇるよーって。いつもとひとつも変わらん笑顔で迎えに来てくれたのさ」
――帰ぇるよー、海斗。美波が泣いてしまうさぁ。大好きなにぃにぃがおらんと泣いてしまうよ
――……おれ……この島におってもいいんか?
――なあーに言っとるばぁ、こん子は。当たり前さぁ
――やてぃん(でも)、おれやぁ……
――やーはわんの大切な子よ。命よりも大切な大切な宝物さぁ。ほら、帰ぇるよ、海斗
「ナダー(涙)が止まらんかった。あの時、初めて、本当の家族になれた気がしちゃん。嬉しかった……」
胸が、燃えるように熱くなった。
なんだろう。
なんだろう……この、胸の奥深くから込み上がってくる感情は。
「やしがさ、おれが本当のにぃにぃじゃないって知ったらさ、美波に嫌われてしまうかもしれん。もう口もきいてくれんかもしれんて思うとね……怖くてさ。どうしても、言い出せんかった」
大声をあげてわあっと泣いてしまいたいのに、できなくて、
「……っ」
でも、声が漏れ出してしまいそうで、とっさに口元を手で塞いだ。
切なくて、苦しくてたまらないのに、すごくすごく温かくて。
でも、息が出来なくなりそうなほど苦しくて。
「ずっと隠して来たんやさ。父さんも母さんもそれでいいよって。おれのしたいようにしていいよって言ってくれた。やてぃんね、隠していたばっかりに、美波を悩ませてしまっていたんよね」
胸が焦げるようにじりじり熱くなった。
その感覚は嫉妬した時とどこか似ていて。
困惑した。
あたしの体の中で、もうひとりのあたしが、もがいている。