恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

10年後の約束

幸せになるために人は人を好きになるのに。


どうしてこんなに、切ないんだろう。








瑠璃色の大きな襟のセーラー服に、スカート。


紺色のハイソックス。


真新しい制服。


朝一のフェリーに乗るための、苦手な早起き。


止まらないあくび。


朝から照り付けるきつい陽射し。


編入してからの1週間は慣れない習慣と環境への緊張と不安の連続だった。


不幸中の幸いなんて言ったら大袈裟かもしれないけど。


里菜と同じクラスになれた事は本当に救いだった。


「里菜! 陽妃!」


朝日が射し込む賑やかな教室の窓際席から、


「おはよう」


と、教室に入ったあたしたちに手を振ってきたのは、新垣 早穂(あらがき さほ)だった。


「「おはよう」」


「ラッキーだしよ。1時間目の数学な、自習やしが」


そう言ってピースをして笑った彼女は、1年の時から里菜と同じクラスならしい。


黒髪のボブヘアーのぱっつん前髪がチャームポイントで、小柄なその容姿は小動物のような可愛らしさだ。


クラスメイトたちはみんな仲良しで、男子も女子もみんな気さくで明るく、意外にも早くなじむことができた。


順風満帆で怖いくらいに楽しい学校生活が送れている。


早穂は石垣島出身の地元民で、ブラスバンド部に所属しトランペットを担当している。


みんなからは、さっちん、と呼ばれて人気者だ。


そして、バスケ部に彼氏がいる、らしい。


「あーい、陽妃。今日の髪型かわいいね。おだんごさん」


早穂の机に椅子を持ち寄り、


「ありがと。今朝ちょっと時間あって暑いし束ねてみたんだ。早穂も前髪決まってるね」


「なにー! わんは? 早穂、わんのことやぁ褒めてくれねーらんのかね」


「ウーウー、里菜がいちばんさ! 里菜がいちばん、ちゅらかーぎ! ねっ、陽妃」


「そうそう」


3人でいつものようにおしゃべりをしていた時だった。

< 250 / 425 >

この作品をシェア

pagetop