恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
そして、波打ち際まで行くと、何かを掴み、


「はぁーるぅーひぃー!」


それを頭上に高く掲げあたしの名前を呼びながら、一目散に駆け戻って来る。


何だろう、あれ。


夕日を跳ね返すその眩しさにたまらず「うっ」と声が漏れ、目を細めた。


「こんなんが流れて来よったぁー!」


息を軽く弾ませながら戻って来た海斗が手にしていた物は、バスケットボールほどの大きさの透明なガラスでできた丸い物だった。


「何これ」


「これやぁ、ブイさ」


「えっ。どこから流れて来たのかな」


あたしは笑いながら制服のポケットから携帯を取り出し、ミニチュア版のそれをぷらぷら揺らして見せた。


「これと同じだ」


ちゅら玉ストラップを見て、海斗がぱあっと笑顔になった。


「それ、付けてくれとるんか」


「うん」


大切にするね、あたしが言うと、海斗がくすぐったそうにはにかんだ。


「ねえ、でもさ。そんな大きいブイどうすんの?」


拾っても使い道なくない? 、と携帯を終いながら言うと、海斗はしばらく「うーん」と考え込んで、


「やさっ! ゆたさんこと(良いこと)思いついたば!」


ひらめいたと言わんばかりの勢いでブイをポンと叩いた。


ピカ、とガラスが光る。


「タイムカプセルなんてどうだね!」


「ええー?」


今時タイムカプセルって。


あたしはケラケラ笑ってしまった。


「って言ったってさ、何入れんの? 宝物とか?」


宝物なんてつまらんよ、どうせなら楽しみがある物にしよう、と海斗が言う。


「例えば?」


「だーるなぁ(そうだなぁ)」


またまた「うーん」と考えるジェスチャーをして、夕日で煌めく水面を見つめていた海斗がこんな提案をしてきた。

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