恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「……かじふちがちゅーさ(来るさ)」


かじふち……台風のことだ。


「えー、ウソさぁー」


と美波ちゃんが明るく笑い飛ばす。


「しばらく天気が続くって、テレビであびてぃたもん(言ってたもん)」


でも、おばあはガンとして言った。


「来るさぁ。かじふちがちゅーさぁ」


気ぃつけなっさー、と。










その夜、あたしはリビングで夜の天気予報を観ていた。


あっち、こっち、とあらゆる放送局をハシゴした。


でも、どのチャンネルの天気予報はどこも同じ予報を流していた。


週間予報は1週間、おひさまのマークがずらっと並んでいた。


しばらく、気温も高く、快晴が続くらしい。


「……はずれるんじゃないの、さすがのおばあだって」


でも、なんだか気がかりで、携帯のウェブでも調べてみた。


「晴れ、晴れ、晴れ……ずっと晴れるじゃん」


あまり気にしないようにしよう、そう思い、あたしはお風呂に入ることにした。


そして、机に向かったのは21時頃だ。


例のタイムカプセルに入れる手紙を書くためだ。


でも、いろいろと考えてしまって、ペンが進まない。


25歳の海斗へ、元気ですか、とそこまで書いて、しばらくフリーズしていた。


「……」


そもそも、だ。


あたしと海斗って、一体、何だろう。


なんだかんだと、毎日、一緒にいる。


それに、約束をしているわけでもないのに、海斗は毎日あたしの帰りをバス停で待ってくれている。


晴れた日は浜へ散歩に行って、帰るとおばあの家でご飯を食べる。


「えー……」


あたしは眉頭を寄せて、ついにペンを置いた。


微妙すぎる。


なんて曖昧な関係なんだろう。


嫌らしいといえば嫌らしい気がしてくる。


なにせ、キスをした仲なのだ。


でも、あの日以来、何もない。


好きだの惚れたの腫れたのと、進展は一切ない。

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