恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
はあ? 、と首を傾げると、葵ちゃんは口をわなわなさせながら言った。


「海斗が。あったに(突然)……志望校変えたんだしよ」


「……何のこと?」


「陽妃さんが何か要らんこと吹き込んだんやっしー? それしか考えられんもん。陽妃さんが原因なんしょみ?」


何。


この子。


まるで、あたしを病原菌みたいに。


海斗がどこの高校を目指しているかなんて知らないし、進路の話を聞いた記憶はない。


「ちょっと待ってよ。あたし、何も――」


「だってそうでしょ!」


食い気味に、噛み付くように、葵ちゃんが詰め寄って来た。


「海斗はわんと一緒に那覇のA高に行ちゅんやっさーから。A高行ちゅんために頑張って来たんだしよ!」


「A高?」


移住して来て間もないあたしでも、名前くらいは知っている。


A高は全寮制で、成績がトップクラスの超進学校だ。


「やさ! 1年生の時からずっとさ、A高目指して来ちゃんだしよ!」


琉球大学や京都大学、あの東大への合格率が高いのだと、里菜たちが話しているのを聞いたことがある。


「それなんに。この時期になってあったにさ! 海斗、石垣島のN高受けるって。進路希望用紙、書き直しちゃんだしよ!」


「え……N高って」


あたしが通っている高校だ。


「陽妃さんと同じ高校受けるって言い出したんだしよ!」


どうしてくれるの、と葵ちゃんはまるで般若のお面のような形相で、あたしの左肩をど突いた。


その衝撃でカッと頭に血がのぼった。


「何すんの」


でも、ぐっと堪えた。


「……そんなの……知らないよ。海斗がそう決めたんでしょ? 何であたしが原因なわけ?」


爆発しそうな苛立ちを堪えて、冷静を装った。


「陽妃さん。海斗のこと、振り回さんでください」


お願いさ、と葵ちゃんが頭を下げた。

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