恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
葵ちゃんの走り去る足音がすっかり聞こえなくなっても、あたしはしばらくそこに立ちすくんだ。


部屋に戻って、何も考えずに熟睡してしまいたい。


でも、どうしても、そこから動くことができなかった。


知らなかった。


あんなに、毎日、いろんなことを話しているのに。


毎日。


海斗にそんな夢があったなんて。


知らなかったから。


なんだかひどく、惨めになった。


こんなに毎日一緒にいたのに。


知らないことだらけだ。


ますます、自分の気持ちが分からなくなってしまった。


あたしたちにその時が迫っていたのに。


一緒の時間が増えれば増えるほど、知りたいと思えば思うほど。


あたしは自分の気持ちが分からなくなる。


その時、は、確実にもうそこに迫っていたのに。


「……じゃあ、あたし……どうしたらいいの……」


星も眠る、静かな夜だった。


風のない、夜だった。











< 263 / 425 >

この作品をシェア

pagetop