恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「いつまで引きずってるのさ! 悠真がしちゃんことや何の意味もねーらんしよ! 無意味なんだしよ! もう、どうしたって亮介や戻って来ねーんだしよ!」


あたしはゴミ箱を抱きしめて、やっとの思いで息を飲んだ。


「……そんなこと……分かっとるば!」


ほっとけ、となげやりに言い、悠真が里菜に背中を向ける。


悠真の背中に陽射しが突き刺さるように降り注いだ。


「誰も、何も悪くねーらん。もう、自分を責めるんはやめなっさぁ……悠真のせいじゃねーらんしよ」


感情を抑えた低い里菜の声に、


「あれが亮介の運命やたんから」


悠真の背中が微かに反応したように見えた。


「誰のせいでもないからさ……悠真」


里菜の声に胸が張り裂けそうになった。


「そろそろ……前に進んでくれねーらんか……悠真よ」


ついに、里菜の声が涙でひび割れてしまった。


「悠真が前に進んでくれんと……わんも前に進めねーんだしよ」


悠真が、ゆっくり振り向く。


「もう、自分の幸せ、考えてもいいんじゃないのかね」


と、里菜はゆっくりと近づいて行き、悠真の胸ポケットに手紙を突っ込んだ。


「あのさ、悠真」


いつも明るい里菜の涙に動揺しているのか、悠真は目を見開き雷に打たれたかのように直立していた。


「みんな一生懸命さ。みんな、必死さ。恋をしちゃん子やみんな必死さ」


涙で震える声で言いながら、里菜が悠真の胸を拳で打った。


「その想いを、悠真や踏みにじってるんだしよ!」


悠真は微動だにせず、里菜の拳を受けながら呆けたように突っ立っている。


「悠真! バカか!」


里菜は悠真の胸を叩きながら泣き叫んだ。


「幸せになりよーさいよ!」


胸をえぐられるような声だった。


「いつまで立ち止まってるのさ! 悠真! ……悠真っ」


呆然と立ち尽くす悠真を叩きながら、里菜はゆっくり、膝から崩れ落ちていった。

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