恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
3章:透明青の風

嵐のよるに

――かじふちが来ちゅん


おばあはやっぱり、本物のユタだった。


おばあの先日のウシラシが大当たりした。










一夜明けて、東の空の袂が白み出したころ、一晩降り続いた雨がようやく上がった。


ほぼ丸2日寝ていない体は重く、食欲もない。


身支度を整えて制服に着替えリビングに行くと、やっぱりお父さんとお母さんの姿はなかった。


8月に比べて台風が少なくなる9月は、ますます観光客が増えるらしい。


民宿が忙しくてまた帰って来れなかったのだろう。


窓の外は雨上がり独特の清潔な青空が広がっていた。


とにかくだるくてだるくて、眠たくて。


ズル休みしてやろうかと思ったけど、それ以上にひとりで居たくなくて、はいつくばってでも学校に行こうと意地になって身支度をした。


バスの時間までまだ少しだけ時間がある。


あたしはソファーに座り、テレビのリモコンのスイッチを入れて、とにかく驚いた。


天気予報を見て、あんぐりしてしまった。


『今朝、マリアナ諸島沖で台風23号が発生しました』


テレビ画面に映し出された、台風の発生位置と今後の進路予想。


「お、おばあ……」


やっぱりただ者じゃなかったのだと改めて思い知らされる。


やっぱり、本物のユタだったんだ……。


「大当たりじゃん、おばあ」


『マリアナ諸島沖で発生した台風は1時間におよそ20キロの速さで西へ進んでいます。中心の気圧は980ヘクトパスカル……』


予報士の声に耳を傾けながら、無意識のうちにごくっと唾を飲んだ。


いや、まるっきり信じていなかったわけじゃない。


でも、まさか当たるとは思っていなかった。


『中心付近の最大風速は20メートル、最大瞬間風速は25メートルで、中心の北東側230キロ……』


どうやら、おばあのウシラシ通り、本当に台風が来るらしい。
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