恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
あたしが泣き疲れて眠るまで、ずっと。


――陽妃に襲いかかってくる悲しみから、陽妃のこと……守ってやれるのにね













海斗が石垣島の病院から那覇の総合病院へ転院した、と連絡が入ったのはそれから3日後のことだった。


海斗の両親は付き添いのため、しばらくの間、那覇の親戚の家に身を寄せることになった。


与那星島から本島に毎日通うことは極めて難しいのだ。


そうなるとまず、莫大なお金がかかってしまう。


それだけじゃない。


例えお金があったとしても、フェリーで石垣島へ渡り、飛行機で宮古島へ飛び、さらに乗り継いで本島の那覇空港まで行かなければならないのだ。


おのずとあたしの両親は民宿を任されることになり、観光シーズンが一区切りするまででもいいから、と民宿に泊まり込みをすることになった。


その間、美波ちゃんはおばあの家に預けられることになった。


でも、美波ちゃんは寂しがることもなく、おばあとの生活を楽しんでいるようにも見えた。


台風から1週間だ経っていた。


島は島民の手によってゆっくりと本来の美しい景色を取り戻し、被害の修復作業に追われていた人たちもそれぞれの日常を取り戻して行く。


抜け殻になったあたしを残して。


あの日から1週間、あたしは学校を休んだままだ。


おばあの家で夕餉をして、帰って来る。


お風呂に入って、明日こそは行こう、と思いながら眠りに就く。


でも、朝目が覚めると急激に気持ちが沈んで、どうしても行く気になれなくなる。


里菜や悠真からも毎日メールが入ってくる。


始めは返していたけれど、それも最初だけで、今はもう返信する気力さえ失せてしまっていた。


もう、何をどうしたらいいのか、分からなくなっていた。


でも、こんなことをしていても何の意味もないのだと気付かせてくれたのは、美波ちゃんのある行動だった。


最近、毎朝、空が明るくなると、美波ちゃんがコソコソとどこかへ出掛けて行くことは気付いていた。

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