恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

サヨナラの準備

どんな魔法を使えば、時間を戻せるのだろう。


どんな魔法を使えば、あの日に戻れるのだろう。


どんな魔法を使えば。


海斗はあたしを思い出してくれるだろう。


毎日、そんなことを考えながら過ごした。








久しぶりに、会った。


4ヶ月ぶりに再会した彼は、手の届かない男の人になっていた。


どんなに願っても、祈っても。


もう、この人の中に入って行くことはできないことを、知った。


久しぶりに、彼に会った。


本当は泣きたくてたまらなかった。


だから、笑顔で別れた。


笑顔で別れたあとに、涙があふれた。


ああ、そろそろ始めなきゃ、と思った。


サヨナラの準備を。










季節はするすると過ぎていった。


「はーるひ。一緒に帰ぇーろう」


「あれっ、里菜、部活は?」


「休みになったんだしさ」


「やった。里菜と一緒に帰るの久しぶりだよね」


「やさよねぇ。あ、どうだね、エンダーにでも寄り道するかね」


「え……太っちゃう……けど行くー!」


「決まりさ! さて、何食べ――」


「エーエー! わんも部活休みになったんだしさ!」


「悠真」


「悠真さぁー。やーは帰宅部でしょ」


「何さぁいいさー。仲間外れにする気かね!」


「違うけどさー。悠真がおるとかしましい(うるさい)んだしよ」


「かしましいって何ね! だいたい里菜やさぁ」


「何! 何か文句でも――」


「もういいじゃん! 3人で行こうよ。ね、里菜」


「……陽妃がいいならわんやかまわんけどさ。とにかく、かしましくさんでよね、悠真。いいね?」


「どういう意味か! ぬー! ぬーぬーぬー!」


「ぬー!」


「もう! ケンカしないでよ、ふたりとも」

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