恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
最終章

恋蛍

またここに、夏が訪れようとしている。


あれから何年もの月日が経った。


「……ふう……暑……」


あたしは小高い丘に立ち、汗を拭った。


真っ青な空に、真っ白な雲。


宝石のように煌めく海。


小さな灯台と、大きな1本の神様の木が見えた。


「本当にいいお天気」


ここへ帰って来たのはちょうど2年前。


胸いっぱいに空気を吸い込む。


あたしは今、与那星島で暮らしている。


「ハイサイ、おばあ」


あたしはその墓石に小さく右手を挙げ、微笑んだ。


「また来ちゃった」


【金城家ノ墓】


今はもう、この島におばあの姿はない。


あたしは丘から海のずっと先を見つめた。


ここから真っ直ぐ。


この美しい海の果ての最果て。


誰もまだ見たことのない幻の島“ニライカナイ”に、きっと、おばあはいる。


「もうすぐ1年になるね。おばあ」


あたしが島へ帰って来た時はもう、手遅れの状態だった。


おばあの体は病に侵され、手の施しようがなかった。


重度の心筋症を、おばあは患っていたのだ。


――陽妃……陽妃ぃ……オバァさぁ


ほとんど寝た切り状態だった。


――オバァ、待っとったよ……あんたが帰って来る日をさ、待っていたんだよ


そして、おばあが息を引き取ったのは、毎日看病していたあたしに最後のウシラシを告げた、翌日のことだった。

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