幻想館-赤ずきん編-
<病院のベッド>


私は目が覚めた。



病室には私以外、誰もいない。


真っ白な天井を見つめる。



少し手を動かした。


「痛ッ・・・」

痛みが走る。



手や腕には、包帯が巻かれている。


私は指一本一本、確かめるように、動かした。



・・・傷だらけ・・・何故なの?



・・・お母さんは、どこなの?



・・・私、お婆さんの所へ行かなきゃ・・・


荷物は?



私、事故にでもあったのかしら・・・?



顔を少し横に向けると、夕焼け空が広がっていた。



真っ赤な夕陽。



しばらく、その風景を眺めていた。


「きれいな夕焼け・・・
お母さんにも見せてあげたかったわ」



・・・見せてあげたかった? って、何で過去形なの?


変だわ!



何が起きたの!



私・・・

何かを忘れてる!



何かって、


誰かとの約束?



それとも単に忘れ物したの?



大事な事・・・・・・?


とっても大事な事を忘れている。



でも何だか、解らない。



思い出せない!!


私は・・・・・・。



その時、病室のドアの向こう側で声が聞こえた。


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