幻想館-赤ずきん編-
そう言われて見回すと、薄暗い部屋の中には何ひとつ売り物は置いてなかった。


「紅茶でも入れましょう。そこの椅子に腰掛けて下さい」


私は何も考えずに座った。


この場所が、私に安らぎを与えてくれる・・・そんな気がした。

館長さん・・・でいいのだろうか?

綺麗なティーカップにそそがれたアールグレイは、大人の香りがした。


館長さんはビデオテープを選んでいた。


「あの、それは何が映っているんですか?」

「単なる童話ですよ。良かったら見ていかれますか?」


青い瞳は、何故か私の心の中まで深く入り込んでくる。


ゆっくりと頷いた


「これは8ミリフィルムで、ビデオテープよりは画質も良くありません。
でもレトロな感じが私は好みなもので、申し訳ありませんがしばらくおつきあい下さい」


私は返事をしたあと紅茶を口にした。


一瞬、意識が遠のいた。


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