隣の人形
「あれは俺と同じ立場の、黄色崎の悩みだ。
黄色崎は自分の気持ちと俺の気持ちを混合し、
自分の悩みを俺の悩みと勘違いしただけだ。
黄色崎は俺じゃないし、俺は黄色崎じゃない。
自分が男であるか女であるか悩んでいたのは、黄色崎だ。
俺は悩んだりしない。
一族の呪いとやらをベラベラ喋られたら、
誰だって怒る。
お前は自分の性癖を母親に喋られても怒らないか?」
寺崎は笑った。
「その例えは微妙だな」
「思い浮かばなかった」
「影無君」
「うん?」
「助けて欲しいのは、あいつじゃないのか?」