隣の人形
目の前のプールでは、子供達が遊んでいた。太陽の光りが反射し、キラキラと、綺麗であった。
「影無君」
寺崎(本物)は俺に話しかける。
無表情ではあるが、真剣な声である。
彼の考えはいっこうに読めない。

その昔、寺崎を俺は女だと思っていた。
寺崎は、一種の妖艶とも言えるオーラをまとっている。
中性的な綺麗さ。
男性とも女性とも見える、両性的な綺麗さ。

もてるのに、
だけども今まで誰とも付き合ってはいない。

何ごとにも動じない、
怒ったりもしない、
泣いた所すらみたことがない。

人間であるのだろうか。
いっそのこと、人間でない方が説明がつく気がする。
「なんだ?」
「影無君は、何があっても俺を信じてくれるだろうか?」
「?どういう…」
「いや、いい。俺は用事がある。黄色崎は適当に頼む」

そういうと寺崎(本物)は、スタスタと行ってしまった。
言葉の意図が分からない俺は、呆然と立ち尽くした。
それから俺と黄色崎はぼーっとプールを眺めていた。
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